Computational Science and Engineering Division, Atomic Energy Society of Japan
  • 【報告】日本原子力学会2014年春の年会 企画セッション報告

    2014.4.30 コメント無し

    2014年3月27日(木) 13:00~14:30 L会場

    「シミュレーションのV&Vの現状と課題」

    座長 越塚 誠一(東京大学)

    (1) 規制庁 笠原 文雄

    過酷事故時格納容器内挙動のV&V データベース

    (2) 東京都市大学 村松 健 教授

    確率論的リスク評価分野におけるV&V

    (3) 伊藤忠テクノソリューションズ 中村 均 氏

    V&V に関わる技術標準の動向

    V&V(Verification & Validation)(検証と妥当性確認)はシミュレーションの信頼性を高めるための方法論である。特に、新規制基準では、過酷事故対策が規制要件化されたことに伴い、過酷事故対策の有効性評価が要求されるようになった。そこでは過酷事故解析の信頼性をどのように高めるか、さらには、どのように評価するかが課題となっている。また、過酷事故対策および安全性向上評価において、確率論的リスク評価(PRA)が重視されるようになるが、PRAのV&Vについても課題を検討しておく必要がある。一方、シミュレーションに関するV&Vの技術標準が整備されつつある。そこで、過酷事故解析のV&V、PRAのV&V、およびV&Vの技術標準の動向について専門の方々より発表いただき、原子力分野におけるシミュレーションのV&Vの現状と課題について議論した。聴講者は68名であった。

    本企画セッションにおける3つの講演の概要は、以下の通りである。

    1.過酷事故時格納容器内挙動のV&Vデータベース(規制庁 笠原 文雄 氏、工藤義朗氏による代理発表)

    OECD/NEAでは2000年代前半に炉内挙動及び熱水力システム挙動に係る試験データベースが整備されていたが、格納容器内挙動については、必要性が叫ばれていたにも係らず試験データベースの整備が遅れていた。しかし、このほどタスクグループメンバの尽力により、CCVM(Containment Code Validation Matrix)としてドキュメントが完成し公開されることになった(NEA/CSNI/R(2013)x)。同報告書では、PWR/BWR、PHWR及びVVERのDBA/BDBA/SAに係る127の現象を6つに分類(熱流動、水素、エアロゾル・FP、ヨウ素化学、溶融物分布、システム)し、総計217の実験をそれらに割り当て、各々の試験の概要やデータ、パラメータの種類と範囲、解析コードのベンチマーク実績等が整理されている。本報告では、CCVMの概要を示すとともに、V&Vの観点から格納容器内挙動データの活用事例が示された。

    2. 確率論的リスク評価分野におけるV&V(東京都市大学 村松 健 教授)

    PRAは、施設の安全を総合的に評価するのが目的であるため、多様なモデルやデータを組み合わせて用いる。従ってV&Vは、個別モデルとそれを統合するシステムモデルの2つの側面で検討されねばならない。本講演では,原子力学会標準委員会が発行しているPRA関係の標準を参考に、2種のV&Vがどう扱われているかを示した。

    また、シミュレーションのV&Vは利用目的に応じた精度の確保を目的とするのに対し、PRAでは、望む精度で評価することは一般には難しいため、利用可能な情報を組み合わせてPRAを行うとともに、その一部として不確実さ評価を行って、不確実さを考慮しつつ意思決定を行う、という発想でなされることが多い。V&VとPRAの不確実さ評価は異なる概念であるが、その構成要素には共通点があることを指摘した。

    3.V&Vに関わる技術標準の動向(伊藤忠テクノソリューションズ 中村 均 氏)

    V&Vという概念は品質保証の基本要素として広く産業界で使われている。ISO9001に従ったシミュレーション業務の品質保証のための標準としては、欧州のNAFEMSによるQSS001があり、日本ではその流れを汲んだ計算工学会の標準(HQC001&2)がある。一方、シミュレーションモデル開発の品質保証の標準としてはASME V&Vが有名であり、固体力学、流体力学、原子力そして医療の分野で標準整備が進められている。日本では原子力学会においてモデリン&シミュレーションの信頼性確保に関するガイドラインの策定作業が進められている。これら動向の整理を試みると共に、原子力学会の活動の概要を紹介した。

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