Computational Science and Engineering Division, Atomic Energy Society of Japan
  • 【報告】2015年春の年会 計算科学技術 一般セッション

    2015.4.14 高田 コメント無し

    日時:2015年3月20日 10:40~18:00

    場所:茨城大学 日立キャンパス I会場(E1棟33教室)

    • 計算科学技術(計算科学技術)

    座長:JAEA 中島憲宏
    I01 FEMジョイント要素を用いた不連続面を含む岩盤の解析的検討
    (構造計画研) 三橋祐太,内山不二男,(東大) 橋本学,○奥田洋司

    不連続面の卓越した岩盤においては、不連続面の分布に岩盤の力学特性が影響を受けることが示唆されているが、それらを各サイトで確率論的に扱うのは非現実的であるため、岩盤中の不連続面モデルを確率的に作成し、作成した不連続面モデルを含む供試体を模擬した岩盤を有限要素法によりモデル化した。不連続面のモデル化にはジョイント要素を用いた。100ケース分作成した有限要素モデルに変位境界条件を与えることでモデル全体としての応力-ひずみ関係を算出し等価な剛性を評価したところ、不連続面の影響による剛性の低下が再現できている結果が得られたことを報告した。

    I02 ガス巻き込みの直接数値解析に向けた手法の開発(7); Manufactured Solutionを用いたコード検証
    (JAEA) ○伊藤啓,大島宏之,(京大) 功刀資彰

    これまでに、高速炉におけるガス巻込み現象を気液二相流数値解析に高精度界面追跡法を用いることで再現できることを示してきているが、これは非常に複雑な現象であり、実験結果・解析結果の不確かさを定量的に評価することが難しい。そこで、解析手法の定量的な検証を目的として、ガス巻込みをモデル化したManufactured Solutionを構築し、試解析を行ったところ、Manufactured Solutionが検証問題としての妥当であることが確認できたことを報告した。

    I03 粒子ベースボリュームレンダリングを利用したマルチフィジックスデータ向け可視化のための高速な粒子生成手法
    (JAEA) ○河村拓馬,井戸村泰宏,宮村浩子,武宮博

    多変量データを可視化する要求が高まっているが、実際に行うためには各変量の相関を描画できるようにする必要がある。そこで、多変量データ可視化向けの多次元伝達関数を開発し、大規模データの可視化に適した手法である粒子ベースボリュームレンダリング(PBVR)に実装し、燃料溶融シミュレーション結果に適用したところ溶融物の形状を取り出しその表面の温度分布を可視化することができた結果を報告した。

    I04 イオン加速器連結STM を用いたAu 表面欠陥挙動解析による極限環境下分子シミュレーションの妥当性評価
    (東大) ○平林潤一,佐藤元洋,村上健太,沖田泰良

    イオン加速器と走査型トンネル顕微鏡(STM)を連結させた装置を用いて、原子レベルで試料表面を観察し、照射欠陥を定量解析する技術を確立してきており、対象を金属材料であるAuへ発展させた実験並びに欠陥形成過程を対象としたMDシミュレーションを行い、双方の結果の比較によって、はじき出し損傷MDシミュレーションの妥当性評価を試みた。表面はじき出し損傷によって形成する欠陥の空間・サイズ分布に関して、MD計算結果が実験結果と良い一致を示すことを報告した。

    • 計算科学技術(破壊試験と数値解析)

    座長:東大 笠原直人
    I05 極限荷重に対する原子炉構造物の破損メカニズム解明と破局的破壊防止策;(1)全体計画
    (東大) ○笠原直人,(防災科技研) 中村いずみ,(テプシス) 町田秀夫,(CTC) 中村均

    福島原子力発電所事故の教訓として、「事故が起こらないように設計する」から「事故が起こることを前提とした設計と対策」への明瞭な意識の転換が必要となっているが、シビアアクシデントや巨大地震など従来想定してなかった過大荷重に対する原子炉構造物の壊れ方ははっきり分かっていない。そこで、事故を想定した設計とマネジメントの実現を目標として、極限荷重の性質と破損メカニズムの解明、限界強度評価法の開発、および破局的破壊防止策の検討を進めてきている。大規模放射性物質放出に繋がらない部位を先行破損させて荷重を減衰させ、破局的な破壊を防止するアイディアを提示していく目標等を報告した。

    I06 極限荷重に対する原子炉構造物の破損メカニズム解明と破局的破壊防止策;(2)極限荷重下における平板破壊現象の観察
    (東大) ○桂也真人,國府田敏明,堀籠達也,出町和之,笠原直人

    地震動によって引き起こされる構造物の想定される損傷モードは、初通過破壊と累積疲労破損の大きく二つに分けられるが、これら破損モードが生じる条件や限界強度は明確ではない。そこで、地震荷重下における種々の破損モードの発生条件を明らかにすることを目的として、鉛アンチモン合金材料を用いた平板試験片の加振試験を行い、データの取得および考察を行った結果、破壊、崩壊、疲労破損の3つの破損モードが確認できたことを報告した。

    I07 極限荷重に対する原子炉構造物の破損メカニズム解明と破局的破壊防止策;(3)極限荷重下の破壊メカニズム解明のための解析的検討
    (テプシス) ○小川博志,嘉村明彦,町田秀夫,(東大) 笠原直人

    DBA(Design Basis Accident)の状態を越える深刻な事故であるDEC(Design Extension Conditions)で生じる破損事象を想定し、(1)バウンダリ破損、(2)影響緩和設備の機能喪失に至る原子炉構造物を評価対象とし、その第一段階として温度、圧力、強制変位などの単一の極限荷重に対する原子炉構造物の破損メカニズム解明のために理論式および数値解析を用いて検討した。圧力荷重に関しては最薄部が最も厳しく、一般部最薄部で限界圧力が設定できることが応力解析から確認され、基本的な破損マップが提案できた旨報告した。

    I08 極限荷重に対する原子炉構造物の破損メカニズム解明と破局的破壊防止策;(4)局部破損に対する構造不連続部の影響検討
    (テプシス) ○嘉村明彦,小川博志,町田秀夫,(東大) 笠原直人

    原子炉構造物を円筒形状で代表させた基本的な破損メカニズムの検討に対して,実機で想定される構造不連続部(支持サポートや開口部等)が局所破損に与える影響を数値解析により確認した。縦置き円筒タンクに地震時の水平振動荷重を静的な変位荷重として負荷した結果について、サポートによる構造不連続の度合いを弾性状態の応力集中係数で整理したところ、サポートの大きさによって発生する相当塑性ひずみが異なり、破損位置の移動が観察された。初期の応力集中だけで破損位置を予測することが難しく、適切な弾塑性解析による検討が必要であることが知見として得られたことを報告した。

    I09 極限荷重に対する原子炉構造物の破損メカニズム解明と破局的破壊防止策;(5)炭素鋼構成式と配管要素の非弾性解析
    (CTC) ○岩田耕司,唐木田泰久,金伝栄,中村均,(東大) 笠原直人

    高圧配管用炭素鋼鋼管STS410を対象として、大ひずみ域までの繰返し負荷に適用できる塑性構成式を提示し、既往の配管要素(エルボ)試験の非弾性解析に適用した。解析によるひずみ振幅は、エルボ中央断面横腹付近内面の周方向成分が最大で、横腹内面の周方向ひずみはラチェット挙動を示した。繰返し硬化あり/なしの解析結果から、ラチェットひずみは繰返し硬化によってやや抑制されるといった結果について報告した。

    • 計算科学技術(プラント解析技術)

    座長:JAEA 伊藤啓

    I10 構造解析解の確かさ推定
    (JAEA) ○中島憲宏,西田明美,川上義明,鈴木喜雄

    原子力機構では、実物大構造物等の振動台試験や運転中の原子力発電施設等の振動台試験を計算機上で実現するための耐震性評価用3次元仮想震動台の開発を進めており、その中核機能のひとつとして、FIESTA(Finite Element Structural Analysis for Assembly)と呼ぶ組立構造物の構造解析コードを開発している。現在、有限要素解析作業における要素分割の適正さと多様なアルゴリズムの選択が課題として挙げられる。そこで、解析結果の不確かさを確認するための仕組みである動的管理機構を開発し、静的解析を用いた実験を行った。並列環境を活用した計算精度の確かさあるいは不確かさを比較する手段により、計算解の推定が可能であることが確認できたことを報告した。

    I11 フラジリティ評価における不確実さの定量化のための感度解析
    (JAEA) ○西田明美,(東大) 糸井達哉,高田毅士,(東京都市大) 古屋治,村松健

    原子力施設のリスクマネジメントの基盤技術としての地震起因事象に関する確率論的リスク評価手法について、評価結果に伴う不確実さを定量化するための検討を進めてきている。建屋・地盤応答解析の認識論的不確実さ評価にかかわる検討としてモデルプラントを対象とする感度解析や応答解析を実施し、作成した原子炉建屋モデルを用いた感度解析の結果、および、試験的に実施した不確実さ評価の結果について報告した。

    I12 ブローアウトパネルを用いたBWR 建屋水素ベントの評価モデル
    (東大) ○近藤雅裕,(電中研) 米田公俊,西義久,稲田文夫

    水素排出に対する建屋ベントの有効性評価のために、数値流体力学(CFD)コードによる評価が行われたが、CFDでは計算コストが大きいため、水素ベント設備の最適設計を目的とした多数のケース評価を現実的な時間で実施できない問題があった。また、短時間で評価ができる集中定数系(LP)モデルは、ブローアウトパネルのような、側壁開口部を用いてベントする場合には、適用できていなかった。そこで、これまでに開発したLPモデルに、側壁開口部のモデルを加え、側壁開口部がある場合の評価をできるように拡張した。設定評価条件下においては、CFD解析とLP評価で結果が良好に一致すること、ならびにCFD解析に代えてLPモデルを用いることの有効性について報告した。

    I13 原子力施設の耐震シミュレーションのV&V に向けた観測データの取り扱い
    (JAEA) ○鈴木喜雄,川上義明,中島憲宏

    大型プラントのものづくりで必要とされる、実験では不可能な詳細かつ一体的な耐震シミュレーション技術を研究開発し、開発した技術の機能確認と動作検証および具体事例への適用実験を進めてきている。その機能確認と動作検証として、高温工学試験研究炉(HTTR)の観測結果との比較による検証と妥当性確認(V&V: Verification and Validation)の実施を目標にしている。観測データである加速度の取り扱いが重要となるため、その計測誤差について検討を実施し、生じ得る誤差について報告した。

    I14 原子力発電所のシステム安全評価のためのレジリエンス指標の提案
    (東大) ○出町和之,鈴木正昭,村上健太,糸井達哉,笠原直人,(法政大) 宮野廣,
    (阪大) 中村隆夫,(INSS) 釜谷昌幸,(AESJ) 荒井滋喜,(保全学会) 山口篤憲,
    (三菱総研) 松本昌昭

    シビアアクシデント時における原子力発電所の安全機能を評価するには、アクシデントマネジメントにより安全機能レベルを回復する能力を簡易的に評価する指標が有効である。本研究ではこの指標をレジリエンス指標と呼び、経年変化、保全、HF、教育と訓練、ハザード強度の影響を考慮に入れて簡易的かつ実用的にレジリエンス指標を評価するための手法を開発した。原子力プラントにおける事故シーケンスの例を対象に、レジリエンス指標の試評価を行い、原子力プラントの安全機能評価手法としてのレジリエンス指標の有効性を確認できたことを報告した。

    I15 東日本大震災による津波を模擬した福島第一原子力発電所1号機タービン建屋の浸水解析
    (東大) ○室谷浩平,越塚誠一,(プロメテック・ソフトウェア) 永井英一,藤澤智光,(構造計画研) 安重晃

    福島第一原子力発電所沿岸部から敷地内までの詳細な津波の遡上解析を行うため、津波波源から沿岸部までを構造計画研究所のソフトウェアTSUNAMI-Kを用い浅水長波方程式により求め、沿岸部から発電所敷地内への遡上計算を粒子法の一種であるMoving Particle Simulation (MPS) 法によって解析を実施した。最大2.5億粒子を用いることで東日本大震災を模擬した実地形津波解析に成功したことを報告した。

    I16 MD 法を用いたBWR 炉内構造材中に形成する照射下微細組織と転位の相互作用に及ぼす材料物性の影響評価
    (東大) ○林祐二郎,沖田泰良,西尾慶太,(JAEA) 板倉充洋

    軽水炉炉内構造材における照射下機械的特性変化のミクロメカニズムである格子間原子型積層欠陥ループ(I-loop)と刃状転位の相互作用について、積層欠陥エネルギー(SFE)の影響を分子動力学(MD)法計算によって解明した。複数の相互作用形態が観察され、SFEが高いほどI-loopが刃状転位により除去される頻度が高くなったことを報告した。

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