Computational Science and Engineering Division, Atomic Energy Society of Japan
  • 【報告】2017年秋の大会 計算科学技術 一般セッション

    2017.10.16 桐村 コメント無し
    • 計算科学技術(損傷・破損解析)
    2016年9 月13日(水)10:00~11:00  G会場 (座長:JAEA 田中 正暁)
    [1G01]熱成層界面ゆらぎによる配管熱疲労に関する信頼性評価
    *鈴木 正昭1  (1. 東京理科大)

    原子力プラントにおいて高サイクル熱疲労破損をもたらす典型的現象の一つである「閉塞分岐配管における熱成層界面ゆらぎ」に対して、熱疲労損傷評価法および信頼性評価について示した。現行のJSME指針では、熱成層界面ゆらぎに対する構造健全性は熱成層界面の位置をもって評価・判定され、熱疲労損傷評価法は整備されていない。本研究では、熱成層界面ゆらぎに対する発生熱応力の周波数応答関数およびそれに基づく熱疲労損傷評価法を開発した。さらに、開発した熱疲労損傷評価法に基づき信頼性評価を実施し、疲労強度のばらつきおよび熱成層界面ゆらぎ現象において特徴的な支配因子である無次元界面厚さが熱疲労き裂発生確率に及ぼす影響を定量評価した。

    [1G02]解析と実験による切欠き付き試験片の局部破損メカニズムに関する研究
    *坂口 貴史1、吉田 瑞城1、佐藤 拓哉1、笠原 直人1  (1. 東京大学大学院)

    原子炉で過酷事故が起きた場合に、多軸応力状態が強くなる構造物では、局部破損と呼ばれる特殊な破損モードが生じる可能性がある。局部破損は、従来の原子炉設計では想定されていなかった破損モードであることから、形状と多軸応力状態の関係など、そのメカニズムは明確でない。本研究では、構造不連続部を模擬した基本的モデルとして切欠き付き厚板を取り上げ、弾塑性有限要素解析及び引張試験を行い、切欠き形状が引張強度に及ぼす影響を検討した。その結果、破損メカニズムを解明するとともに、引張強度に影響を及ぼす支配パラメータは応力集中係数やひずみ集中係数ではなく、塑性拘束の度合いを表す特殊な係数であること及びその係数が塑性変形の進展とともに変化することを明らかにした。

    [1G03]剛飛翔体衝突を受けるRC版の損傷評価法に関する検討
    *南波 宏介1、白井 孝治1、丹羽 一邦2、竹越 邦夫2、高橋 達朗2 (1. 電中研、2. テラバイト)

    飛来物衝突を受ける鉄筋コンクリート(以下、RC)版の貫通、裏面剥離を推定可能な損傷評価法として、せん断ひずみ、圧力を基にRC要素を消去することでRC版の損傷を模擬する有限要素解析を実施した。その結果、既往の衝突実験で見られた裏面剥離や貫通の応答性状が確認され、評価法の適用可能性が得られた。

    [1G04]剛および柔飛翔体の斜め衝突によるRC 版の局部損傷評価
    *坪田 張二1、太田 良巳1、西田 明美1 (1. 日本原子力研究開発機構)

    飛翔体の衝突に伴う構造物の局部損傷については、その破壊様式に応じて多くの評価式が提案されている。既往の評価式は、構造物に対して剛飛翔体が垂直に衝突する実験結果から導かれた実験式が主である。また柔飛翔体の衝突に係る局部損傷の評価ついては、剛飛翔体の衝突で導かれた評価結果に低減係数を乗じて各評価が実施されている。一方、斜め衝突に関する研究はほとんど行われていないのが現状である。そこで本研究では、実験結果およびシミュレーション結果に基づき斜め衝突に対する局部損傷評価式を提案することを目的とする。本稿では、検証された解析手法を用いて実施した、剛および柔飛翔体の垂直および斜め衝突のシミュレーション解析の結果を示す。解析の結果、飛翔体の剛性および衝突角度がRC構造物の局部損傷に及ぼす影響が明らかになった。

    • 計算科学技術(高性能計算)
    2016年9 月13 日(水)11:00~12:00  G会場(座長:原子力エンジ 巽 雅洋)
    [1G05] 原子力施設全体規模の構造解析に向けた要素毎有限要素接触解析手法(性能改善のための並列化手法開発)
    *鈴木 喜雄1 (1. 原子力機構)

    原子力施設全体規模の構造解析に向けて実施した、要素毎有限要素接触解析手法の研究開発の成果について報告する。これまでに提案した、Lagrange未定乗数法とMultiple Front法を用いて並列かつ省メモリに解析可能な要素毎有限要素接触解析手法について、性能改善のための並列化手法の開発を実施した。

    [1G06]並列FEMのための直接法・反復法統一的線形ソルバ
    *森田 直樹1、橋本 学1、奥田 洋司1 (1. 東京大学大学院)

    有限要素法において、離散化から得られる連立一次方程式の解法は、直接法と反復法に大別される。直接法は一定の演算回数で解を得る手法であり、反復法は解を反復的に修正することで解を得る手法である。反復法や直接法は、解くべき問題の自由度や条件数などの情報から、問題に適した手法が経験的に選択される。一方、直接法は解の精度を高めるため求解計算の外側に反復法を利用し、反復法は前処理能力を向上させるためにフィルインを考慮するなど、両者には類似する部分が多い。

    本研究ではこれらの背景から、直接法・反復法を内包することで、両者を統一的に取り扱うことのできる線形ソルバの設計を提案する。特に提案手法は、領域分割に基づく並列有限要素法のデータ構造を利用して手法を整理する。本研究は、直接法・反復法の特徴をいくつかのパラメータで制御することで、様々な条件の問題を効率よく求解できる。

    [1G07]多相流体コードJUPITERにおける前処理付きChebyshev基底CG法ソルバの収束特性評価
    *真弓 明恵1、井戸村 泰宏1、伊奈 拓哉1、山田 進1、今村 俊幸2 (1. 原子力機構、2. 理研AICS)

    多相多成分熱流動解析コードJUPITER における悪条件のポアソンソルバに省通信共役勾配(CA-CG)法を適用する上で収束特性の向上が課題となっている。本研究では、この問題を解決するためにChebyshev基底CG(CBCG)法を実装し、実問題において収束特性を評価した。

    [1G08] 格子ボルツマン法を用いた物質拡散計算の高速化
    *小野寺 直幸1、井戸村 泰宏1 (1. 日本原子力研究開発機構)

    放射性物質の拡散予測シミュレーションは社会的関心が非常に高く、迅速性および正確性が求められている。人が生活する路地や建物等を含んだ解析を実施するためには、計算機性能を最大限に引き出す頃が可能な計算手法の構築が必須となる。格子ボルツマン法は規則的なメモリアクセスと高密度な演算を持つ、大規模計算に適した手法である。本研究では、格子ボルツマン法による高速な解析を実現するために、メニーコア・プロセッサに適したメモリ配置および計算順序等の最適化を実施し、高速な物質拡散解析の実現のためのプログラム設計について述べた。

     

    • 計算科学技術(耐震・燃料解析)

    2017年9月13日(水) 14:45〜15:50  G会場(座長:JAEA 西田 明美)
    [1G09] ABWR原子炉建屋の3次元FEM耐震解析における使用済燃料プール水のモデル化方法
    (1)矩形容器に対する仮想流体質量法の適用性
    *後藤 祥広1、鬼塚 翔平1、小島 直貴2、飯島 唯司1、高原 弘樹3 (1. 日立GE、2. HiICS、3. 東工大)

    本研究は、3次元FEMモデルを用いたABWR原子炉建屋の耐震解析における、使用済燃料プール水のモデル化方法の構築を目的とする。その1では、その2の検討で流体をモデル化するために用いる仮想流体質量法の、矩形容器に対する適用性を既往の振動試験により確認した。この振動試験では、単純な矩形容器を用いて、容器中流体の1次固有振動数にて加振を行い、波高時刻歴を変位計で計測し、また全体的な流体の挙動を画像計測している。仮想流体質量法により流体をモデル化した3次元FEMモデルを用いて、振動試験のシミュレーション解析を実施し、得られた固有振動数、波高時刻歴を試験結果と比較した。解析結果と試験結果はよく一致しており、仮想流体質量法による流体モデル化の矩形容器への適用性を確認した。

     

    [1G10] ABWR原子炉建屋の3次元FEM耐震解析における使用済燃料プール水のモデル化方法
    (2)使用済燃料プール水の簡便なモデル化方法
    *鬼塚 翔平1、後藤 祥広1、小島 直貴2、飯島 唯司1 (1. 日立GE、2. HiICS)

    本研究は、3次元FEMによるABWR原子炉建屋の耐震解析における、使用済燃料プール水のモデル化方法の構築を目的とする。その2では、使用済燃料プール水の遥動がABWR原子炉建屋の地震応答に与える影響を評価するために、その1で検証した仮想流体質量法をABWR原子炉建屋の3次元FEMモデルに適用し、流体構造連成効果を考慮した耐震解析を行った。比較のために、プール水の遥動の効果を考慮しないモデルに対しても耐震解析を行った。得られた地震応答を比較すると、上述の2つのモデルで一致した。この結果は、プール水の遥動が原子炉建屋の地震応答に与える影響は小さいことを示唆しており、プール水の質量のみ考慮すればよいと結論した。

     

    [1G11] 深層学習と強化学習による燃料装荷パターン最適化手法の検討(2)炉心燃焼特性の予測に関する検討
    *巽 雅洋1 (1. 原子力エンジ)

    無限増倍率ベクトルを入力とした深層ニューラルネットワークを構築し、炉心の燃焼特性評価を試みた。集合体最大出力と臨界ほう素濃度の燃焼特性を高速に予測することが可能であることを確認し、不確かさ評価を行った。予測誤差が大きい場合もあり、更なる検討が必要である。

     

    [1G12] 深層学習による燃料装荷パターンの直感的生成手法の検討
    *石谷 和己1 (1. 原電エンジニアリング株式会社)

    取替炉心設計では、限られた期間内に天文学的な組合せから設計条件を満たす装荷パターンを探し出す必要がある。その際、使用可能な燃料の中からどの燃料を用いるかも併せて考える必要がある。有用だが探索時間に少なくとも数十分を要する自動探索コードを投入する価値の有る燃料の組合せを(試行錯誤的な探索過程を経ずに)瞬時に見極めるべく、自動探索コードにより最適化された装荷パターンを教師データとして深層ニューラルネットワークに学習させ出力させることを考えた。

     

    • 計算科学技術(事故解析)

    2017年9月13日(水)15:50〜16:55  G会場(座長:京大 伊藤 啓)
    [1G13] 高速増殖炉の炉心溶融事故後冷却挙動の研究(33)格子ボルツマン法によるジェットブレイクアップ挙動の数値シミュレーション
    *齋藤 慎平1、阿部 豊1、金子 暁子1、成合 英樹1 (1. 筑波大)

    高速増殖炉の炉心溶融事故時には,ジェット状に放出された溶融燃料挙動の把握が重要となる。本報では,中央モーメントの概念に基づき二相系格子ボルツマン法を高密度比かつ高Reynolds数条件に対して拡張し,既存実験結果の再現を試みた。

    [1G14] 原子炉事故解析に向けたマルチフィジクス粒子法コードの開発(3)共晶モデルの開発
    *稲垣 健太1 (1. 電中研)

    原子炉事故で発生しうる物質の溶融凝固や移動、大変形を伴う複雑な現象を解析するためのマルチフィジクス粒子法コードを開発している。本研究では炉内で発生する燃料および構造物などの共晶反応を取り扱うためのモデルを開発し、コードに実装した。

    [1G15] 固気混相流体系における臨界シミュレーション
    *高畑 和弥1、酒井 幹夫1、山口 彰1、Dimitrios Pavldis2、Christopher Pain2 (1. 東京大学大学院、2. Imperial College London)

    シビアアクシデントマネジメントおよび廃炉において、炉内状況の分析が重要であるとともに、安全性の担保には臨界の可能性を評価することが必要となる。臨界の管理のために核分裂生成物のモニタリングが行われているが、デブリの取り出し過程における臨界管理を安全にかつ効率的に行うためには、数値シミュレーション技術の導入が有効である。本研究では、固気混相流シミュレーションの計算結果に対してMCNPを用いた臨界計算を行う。この手法を用いることにより、炉内状況を詳細に把握するとともに、臨界の可能性評価を同時に行うことが可能となるため、既存の手法と比較して大幅に安全性を確保することができる。

    [1G16] DEM粗視化モデルを用いた固気液三相流の数値シミュレーション
    *田村 耕太郎1、酒井 幹夫1 (1. 東京大学大学院)

    DEM(Discrete Element Method)は固体粒子のマクロ挙動を計算する手法であり、固気液三相流の解析においては、DEMとVOF(Volume of Fluids)法を連成させたDEM-VOF法が用いられている。しかし、大規模体系では計算コストが高くなるため、高速化にはDEM粗視化モデルの適用が有効である。本研究では、DEM粗視化モデルを固気液三相流に対して初めて適用し、回転円筒内部における固気液三相流の振る舞いを評価した。数値解析により、DEM粗視化モデル体系とオリジナル体系の両者における固相及び液面の挙動が一致することが確認され、固気液三相流の解析におけるDEM粗視化モデルの有用性が示唆された。

    • 計算科学技術(微視的解析)

    2017年9月13日(水)16:55〜18:15  G会場(座長:東京理科大 鈴木 正昭)
    [1G17] MD法による中性子照射下結晶欠陥形成過程に及ぼす材料物性の影響に関する検討(3)
    *中西 大貴2、川畑 友弥2、*沖田 泰良1、板倉 充洋3 (1. 東京大学人工物工学研究センター、2. 東京大学大学院工学系研究科、3. 日本原子力研究開発機構システム計算科学センター)

    面心立方金属を対象として,高エネルギー粒子入射下における結晶欠陥形成過程をMD法により定量化した。自己格子間原子集合体に着目すると,その形態は材料物性の影響を受け,不動性と可動性が決定づけられることが明らかとなった。

     

    [1G18] 面心立方金属を対象とした照射欠陥挙動のモデル化
    *安達 悠希也1、早川 頌2、沖田 泰良3、板倉 充洋4 (1. 東京大学工学部、2. 東京大学大学院工学系研究科、3. 東京大学人工物工学研究センター、4. 日本原子力研究開発機構システム計算科学センター)

    面心立方金属を対象として、部分転位拡張幅の時間変化を分子動力学法により評価した。オーステナイトに相当する低積層欠陥エネルギー材料では、融点の半分以上の高温でも、拡張幅が比較的小さいらせん転位でも,熱揺らぎのみによる転位の収縮は観察されないことが明らかとなった。

     

    [1G19] MD法を用いた原子空孔集合体-転位相互作用に及ぼす積層欠陥エネルギーの影響解明(2)
    *土井原 康平1、沖田 泰良2、板倉 充洋3 (1. 東京大学大学院工学系研究科、2.東京大学人工物工学研究センター、3. 日本原子力研究開発機構)

    積層欠陥エネルギー (SFE) が最も低い金属の一つであるオーステナイト鋼に着目し、照射硬化の一要因であるらせん転位-原子空孔集合体相互作用に関してSFEの影響を原子論的に解析した。らせん転位の収縮、交差すべりの発生頻度・回数が相互作用形態を決定づける因子であることを明らかにした。

     

    [1G20] BCC-Feにおける転位-結晶欠陥集合体間相互作用の原子論的解析
    *早川 頌1、沖田 泰良2、板倉 充洋3、Haixuan Xu4、Yury N。 Osetsky5 (1. 東京大学大学院、2. 東京大学、3. 日本原子力研究開発機構、4. The University of Tennessee、5. Oak Ridge National Laboratory)

    BCC鉄中における転位と自己格子間原子集合体の相互作用に関して,on-the-fly kinetic Monte Carloを用いた原子論的解析を行なった。その際,従来時間スケールの問題により精緻な解析が困難であった自己格子間原子集合体の保存的上昇運動を取り入れ,転位による自己格子間原子集合体の吸収過程を再現した。

     

    [1G21] スペクトル法を用いた重イオン衝突過程の精密計算
    *岩田 順敬1,2、武井 康浩3 (1. 東京工業大学 科学技術創成研究院、2. 芝浦工業大学 共通数理、3. みずほ情報総研)

    スペクトル法を用いることによって非定常問題を高精度で計算する。とくに非線形クライン・ゴルドン方程式を対象とすることで重イオン衝突、核融合過程、核分裂過程をこれまでにない高精度・高自由度で計算することを目指す。コード開発計画の概要を示した。

    Comments are closed.