Computational Science and Engineering Division, Atomic Energy Society of Japan
  • 第7回(平成21年度)部会賞 贈賞報告

    2010.3.28 コメント無し

    表彰小委員会委員長 吉村忍(東京大学)

    選考経緯

    部会メーリングリストおよび部会ホームページを通して、本年度部会賞候補者の募集を平成21年12月18日締め切りで行いました。その結果、部会功績賞、部会業績賞、部会奨励賞、部会学生優秀講演賞に複数名の推薦がありました。

    平成22年1月19日に表彰小委員会を開催し慎重に審議致しました。その選考結果を部会運営委員会にお諮りし、最終的に、部会功績賞1件、部会奨励賞1件、部会学生優秀講演賞1件を決定させていただきました。その結果は以下の通りです。


    部会功績賞

    計算科学技術分野において幅広くかつ顕著な貢献のあった個人を対象とし、毎年1名以内とする

    受賞者名: 二ノ方寿(にのかたひさし) 氏(東京工業大学教授)

    業績名 : 「計算科学技術の発展と普及ならびにシミュレーション技術者の育成に対する先駆的貢献
    贈賞理由:
     二ノ方寿氏は、燃料集合体のサブチャンネル解析や直接数値シミュレーション研究のパイオニアとして数々の先駆的研究を行った。特に高速炉の分野では、ナトリウム沸騰の分野にCFDを導入し、国際ベンチマーク問題での最優秀賞を受賞するなどの研究業績を挙げた。併せて、高速炉開発や安全評価において、CFDを本格的に利用する先鞭をつけるとともに指導的役割を果たした。この間、動力炉・核燃料開発事業団において、数多くの計算科学技術研究者を育成し、それが、もんじゅの安全性評価や現在のFaCT研究における計算科学技術の利用に繋がっている。さらに、同氏の研究分野は混層流、乱流シミュレーションなどに発展し、その時代における最速計算機技術を駆使した原子力分野への数値流体技術の発展と実用化に多くの貢献を果たした。東京工業大学においてこれらの研究を通じて、多数の学生を指導し、その卒業生は産業界、研究機関などで活躍している。
     また、2002年から2004年にかけて、原子力学会にて「計算結果評価法専門委員会」を設置し、主査として計算科学技術の精度評価に関する分野横断的な検討を主導した。本専門委員会は、計算科学技術部会が所掌する最初の専門委員会でもあり、部会の研究活動を大きく前進させたことは特筆に価する功績である。
     同氏は、計算科学技術部会発足の2002年度から2004年度には、計算科学技術部会の副部会長として部会の黎明期の活動に貢献し、2005年度には同部会長として、部会の研究活動の拡大、国際協力関係の推進など、部会の発展期を牽引した。
    以上の通り、二ノ方寿氏は、その研究経歴を通じ、一貫して計算科学技術の発展を願い、研究活動ならびに教育活動をそのような観点から強力に推進し、多大なる成果を挙げるとともに、同氏の育成した人材は原子力分野各界で活躍している。


    部会奨励賞

    計算科学技術分野において顕著な学術または技術上の業績のあった40才まで(平成22年3月31日において)の個人を対象とし、毎年3名以内。

    受賞者名:山田知典(やまだとものり) 氏 (日本原子力研究機構 研究員)
    業績名 :「大規模有限要素法解析技術による原子力施設耐震計算科学の推進」
    贈賞理由:
     山田知典氏は、近年の大地震を契機として原子力施設の耐震安全性への関心が高まる中、大規模有限要素法解析技術を活用し、原子力プラント全体の詳細な振動挙動が把握可能な次世代耐震シミュレーション基盤の構築を推進している。これまでの研究開発において、有限要素法による大規模構造解析技術を確立し、実在する原子炉施設に対して数値実験を重ねることにより、施設全体規模の解析の高速化や技術向上に貢献した。具体的には仮想空間上に原子力施設内の主要機器群シミュレーションモデル(2億自由度)を構築し、詳細解析では20億自由度以上の超大規模問題が必要となることを示し、予測された規模の解析を実現するため並列計算アルゴリズムの効率化に取り組み、既存手法に比べ10倍の高速化を達成した。また、これらの知見を元に豊富な材料モデルを利用した超大規模シミュレーションを可能とする新しい解析プラットフォームの構築に取り組むなど着実な研究開発を進めている。同氏は、これまでに国内外の賞を複数受賞するなど高い評価を受けており、今後も計算科学技術分野において先導的な役割を果たすことが期待できる。

    部会学生優秀講演賞

    計算科学技術分野において、原子力学会春の年会あるいは秋の大会の計算科学技術セッションにおいて、他の模範となる講演を行った学生を対象とし、毎年4名程度とする。

    受賞者名:小瀬裕男(おせやすお) 氏(京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻博士課程1年)
    業績名 :「サブクール・プール沸騰における伝熱面からの気泡離脱に関する数値シミュレーション」
    贈賞理由:
    小瀬裕男氏は、混相流数値解析手法MARS を用いたサブクール・プール沸騰における伝熱面からの気泡離脱に着目した詳細な数値シミュレーションを行い、別途実施された可視化実験結果との比較を通じて、気泡離脱に関するメカニズムを検討した。その結果、実験で観察された伝熱面からの気泡離脱過程の基本的な特徴を、本数値シミュレーションによって良好に再現することに成功した。2009年秋の大会における講演では、伝熱面からの気泡離脱という複雑な現象について行った精密な研究成果を、アニメーションを駆使しながら大変分かりやすく発表を行った。

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