Computational Science and Engineering Division, Atomic Energy Society of Japan
  • 第9回(2011年度)部会賞 贈賞報告

    2012.3.31 コメント無し

    表彰小委員会委員長 山口 彰(大阪大学)

    選考経緯

    部会メーリングリストおよび部会ホームページを通して、本年度部会賞候補者の募集を平成24年2月10日(金)締め切りで行いました。その結果、部会功績賞、部会業績賞、部会CG賞、部会奨励賞、部会学生優秀講演賞に複数名の推薦がありました。

     

    平成24年3月07日(水)までに表彰小委員会をメール等で開催し慎重に審議致しました。その選考結果を部会運営委員会にお諮りし、最終的に、部会功績賞1件、部会業績賞1件、部会CG賞該当無し、部会奨励賞3件、部会学生優秀講演賞該当無し、を決定させていただきました。その結果は以下の通りです。

     

    部会功績賞

    計算科学技術分野において幅広くかつ顕著な貢献のあった個人を対象とし、毎年1名以内とする

    受賞者名:内藤 正則(ないとう まさのり)氏(エネルギー総合工学研究所)

    業績名 :「機構論的モデルに基づく原子力安全解析技術の構築に関する先駆的貢献」
    (英訳)Pioneering Contribution on System Development of Nuclear Power Plant Safety Analysis based on Mechanistic Models

    贈賞理由:
    内藤正則氏は、機構論的モデルに基づく原子力安全解析ソフトウェアの開発を主導し、長年にわたる計算科学技術分野における功績は顕著である。特に、IMPACTソフトウェアシステムの開発においては、安全解析に係る多くの学術分野の機構論的モデルにより構成される解析コードを10 年計画にて完成させた。また、流動加速型腐食による配管の減肉の問題にも機構論的モデルにより取組み、配管減肉解析コードDRAWTHREE の開発の牽引役を果たした。IMPACT のCAPE やSAMPSONは、OECD/NEA が主催する国際ベンチマーク問題にて極めて優れた検証結果を発表し海外から高く評価されたほか、USNRC にも提供され、参照コードとして使用された。福島第一原子力発電所事故後には、SAMPSON のよりシビアアクシデントの事象進展評価や再臨界評価等適用し、その技術力を示した。内藤正則氏は、計算科学技術分野にて原子力学会賞(論文賞、技術開発賞、技術賞)を3 度にわたり受賞したほか、2006年度には計算科学技術部会長として部会の発展に貢献した。2006 年の「シビアアクシデントに関する国際会議」主催する等、国際会議の運営や企画における貢献も特筆すべきものがある。

     


    部会業績賞

    計算科学技術分野において顕著な学術または技術上の業績のあった個人またはグループ(連名)を対象とし、毎年2件以内とする。

    受賞者名:守田 幸路(もりた こうじ)氏(九州大学)
    業績名 :「炉心溶融事故における多相多成分流のシミュレーション技術の高度化」
    (英訳)Improvement of Simulation Technology for multiphase multicomponent flows in core melting accidents

    贈賞理由:
    守田幸路氏は、ナトリウム冷却高速炉の炉心溶融事故における多相多成分流の解析コードの開発及び検証を行い、次世代炉開発におけるシミュレーション技術の高度化に大きく貢献するとともに、世界的にも注目される研究業績を挙げた。炉心溶融事故は、超高温状態で溶融・固化と蒸発・凝縮が複雑に連関する現象であり、急速に炉心物質が移動する過渡現象であることから、実験で解明できない場合が多い。守田氏は、マクロコードであるSIMMER-III の多相多成分流のモデル化を行い実機適用可能なレベルにまで高度化を図るとともに、最新のシミュレーション技術である粒子法に基づいた多相多成分流解析コードを開発し、固化現象のミクロな挙動を解明することを可能にした。シビアアクシデント研究はますます重要度が増すと考えられ、原子力安全分野における国内のみならず国際的貢献は大きい同氏の業績を高く評価する。

     

     

    部会CG賞

    原子力の計算科学技術分野において結果の表示・可視化について優秀な業績のあった個人またはグループ(連名)を対象とし、毎年2件以内とする。

    該当無し。

     

     

    部会奨励賞

    計算科学技術分野において顕著な学術または技術上の業績のあった40才程度まで(平成23年3月31日において)の個人を対象とし、毎年3名以内。

    受賞者名:高田 孝(たかだ たかし) 氏 (大阪大学)
    業績名 :「高速炉マルチフィジックスシミュレーション手法の開発」
    (英訳)Development of simulation methods for multi-physics phenomena in fast breeder reactors

    贈賞理由:
    髙田孝氏は、高速増殖炉の熱流動現象の数値解析手法開発にて優秀な業績をあげた。多次元混相流と化学反応が相互作用する高速炉特有の事故事象であるナトリウム漏洩・燃焼現象をメカニスティックに解く手法を世界に先駆けて開発し、計測の困難さから実験単独では困難であった現象の機構論的解明ならびに様々な予測評価に大いに貢献した。また、構造材への熱的影響を詳細に分析し設計の最適化に寄与することを目的としてラージ・エディ・シミュレーション手法を開発、当時の計算機処理能力でも工学的利用に十分耐えられるよう、計算時間と精度のバランスを勘案した壁近傍モデルも新たに考案した。さらには、高速増殖炉の事故事象評価の最難関の1つである蒸気発生器伝熱管破損事象に対して、不足膨張により音速を超えて噴出する水・蒸気と周囲のナトリウムで形成される反応ジェット挙動を取り扱える多成分多相流の解析手法を並列技術を駆使して開発、これも世界に先駆けて多次元数値シミュレーションを可能としたものであり、これまで実験による実証という手段しかなかった事象評価に対して機構論的分析手段を提供した。高速増殖炉における熱流動関連の現象解明ならびに安全設計評価に対して、世界の先駆けとなる数値解析手法を複数開発・提供するとともに、数値解析技術進歩の牽引役として大いに貢献してきた。高田氏の今後の研究の進展ならびに計算科学技術分野のおける活躍と貢献が期待できる。

     

    受賞者名:巽 雅洋(たつみ まさひろ) 氏(原子燃料工業株式会社)
    業績名 :「細粒度並列計算アルゴリズムに基づく中性子輸送計算コードの開発と実炉心設計への適用」
    (英訳) Development of neutron transport calculation code based on a fine-grain parallel algorithm and its application to actual reactor design tasks

    贈賞理由:
    巽雅洋氏は、多群輸送ノード法に基づく三次元詳細メッシュ炉心計算コードSCOPE2を実用化し、炉心設計精度の大幅な向上を果たした。計算の高精度化に伴い、計算負荷が著しく増大する課題に対し、並列計算機の利用を前提とした細粒度並列計算アルゴリズムを開発し、設計現場で利用可能な高い並列性能と実用的な計算時間を両立させた。また、計算コードのライフサイクルの長期化に備え、高保守性の実現に向けたオブジェクト指向設計を目標に据え、並列入出力による外部記憶管理、スカラプロセッサ向けの最適化、GPUを用いた計算アルゴリズム開発を行っている。さらに、V&V(解析コードの体系的検証)に注目し、炉物理分野の解析コードのシミュレーション信頼性の分野においても独自の方法を提案している。巽氏は、炉心設計の高度化のための多群輸送ノード法の発展を通じて、炉物理分野における計算科学技術研究を着実に実施していることに加え、計算科学技術部会の運営委員としても活躍しており、今後の活躍と貢献が期待できる。

     

    受賞者名:横山 賢治(よこやま けんじ) 氏(日本原子力研究開発機構)
    業績名 :「高速炉用オブジェクト統合型解析システムMARBLE 1.0 の開発」
    (英訳) Development of MARBLE 1.0, the object-oriented analysis system for fast reactors

    贈賞理由:
    横山賢治氏は、2003 年から最新の計算技術であるオブジェクト指向プログラミング技術を取り入れたMARBLE システムの開発に取り組み、開発チームのリーダーとして技術・運営の両面から中心的役割を続け、2010 年春にVersion 1.0 を完成し公開した。開発したMARBLE 1.0 は、公開され、複数の大学やメーカーにて供用されている。横山氏は、高速炉核特性解析システムの普及や利用サポート、システムの柔軟性や拡張性・作業効率の向上にも積極的に取り組んでいる。その成果は、国内学会等やOECD/NEA 専門家会合などで積極的に報告している。炉物理国際会議PHYSOR2008 ではBest Poster Award 候補としてノミネートされるなど、国際的評価も高い。横山氏は、計算科学技術分野の発展と技術の普及に高い意欲と関心を持っており、今後の活躍と貢献が期待できる。

     

     

    部会学生優秀講演賞

    計算科学技術分野において、他の模範となる講演を行った学生を対象とし、毎年4名程度とする

    該当無し。

     

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