Computational Science and Engineering Division, Atomic Energy Society of Japan
  • 【報告】2013年秋の大会での全体会議・特別講演

    2013.10.9 桐村 コメント無し

     

    【全体会議】

    1)部会長挨拶、活動報告

    2012年6月 に発足した日本原子力学会の東京電力福島第一原子力発電所に関する調査委員会に対して、計算科学技術に関する主要な問題点として、地震動解析、津波解析、放射性物質の大気拡散解析、シビアアクシデン ト解析の4点について取りまとめていることが報告された。また、2012年9月に発足した原子力規制委員会が策定を進めている新安全規制における計算科学技術の役割と課題として、特に、様々な外的事象に対する解析手法、シビアアクシデント解析、確率論的リスク評価、そして、V&Vの4点への貢献が期待されていることが述べられた。また、計算科学技術部会の活性化に向けた部会員増強策などを今後検討していくことが述べられた。

    2)事故調査報告書サマリー

    事故調査委員会の立ち上げの経緯が紹介され,9月2日(月)に東京三田の建築会館において最終報告書(案)の説明会が開かれたことが報告された。本報告書は、丸善出版㈱より本年12月20日に刊行される計画である。価格は2500円で初版3000部を予定している。計算科学技術部会は、計算科学の観点から事故調査にかかわることを提案し、第6章の6.9節「解析シミュレーションについて」を担当してきた。計算科学技術の観点から事故から伺える、あるいは計算科学技術の観点で明らかとなった課題の分析をまとめ報告した。報告内容は、以下の通りである。地震動解析では、少なくとも津波被害を受ける迄、施設の「冷やす」、「止める」の過程が確実に進んだことから、当時および建設後の計算科学的な研鑽の積み重ねが有効であったと報告した。津波解析では、常に最先端計算機性能を活用した数値計算技法を活用や確率論的津波評価とリスク評価手法 を積極的に導入し、一層合理的な「想定」を導く努力の継続が必要であることを報告した。放射性物質の大気拡散解析の課題分析では、3月11日の事故当初から予め決められた指針に沿った役割を果たし、単位放出を仮定した予測結果は緊急時モニタリング計画に、放出量逆推定に基づく線量予測は甲状腺被ばくのスクリーニング検査に活用されたという事実を報告した。シビアアクシデント解析においては、事故後に実測されたプラントデータを再現できない部分があったことを報告した。その主たる理由は、解析コードにおいても長期にわたる全電源喪失時に現れる物理現象をモデル化していなかった点にあることも報告した。

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    【特別講演】

    石本淳先生(東北大学流体科学研究所)

    「漂流物混入型津波と流体・構造物相互作用に関するスーパーコンピューティング」

    津波における漂流物が構造物に衝突した場合の流体・構造物相互作用を考慮したシミュレーションに関してのご講演がなされた.ALE法による有限要素解析により、自動車と津波の相互作用を考慮した解析が行われ、自動車が津波により流される様子のシミュレーション結果が示された。また、水門に漂流物混入型津波が作用する場合、漂流物の衝突を考慮した場合には考慮しない場合と比較して作用する衝撃荷重の最大値が2倍程度になることが示された。さらに、津波により手前の軽い構造物が流され、後ろにある構造体にぶつかるSPH法によるシミュレーションが示された。漂流物との相互作用を考慮した津波解析が計算科学的に可能であること、また、構造物への作用荷重を想定する場合にもこのような相互作用解析が重要であることが示された。

     

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