Computational Science and Engineering Division, Atomic Energy Society of Japan
  • 【報告】日本原子力学会2016年秋の大会 企画セッション

    2016.9.23 桐村 コメント無し

    2016年9月8日(木) 13:00~14:30 L会場

    場所: 久留米シティプラザ

    「外部ハザード評価のための数値解析」

    座長:(JAEA)西田明美 氏

    原子力規制委員会が定めた新規制基準への適合性審査においては、様々な外部ハザードに対する影響評価が求められている。しかし、対象とする現象のスケールが非常に大きく、また、現象の不確定性(発生頻度・発生強度)も大きいため、試験によって影響評価を行うことは困難であり、一般的に、数値解析(シミュレーション)を用いた評価が実施されている。特に、本セッションの対象とする現象に関しては、数値解析を用いた評価が有効であると考えられる(地震評価に関しては平成25年の企画セッションにて実施済みのため、今回のテーマからは除外)。ただし、解析を実施する場合においても、適切なモデル選択や境界条件設定といった課題が残されており、十分な説明性(妥当性)を有する解析結果を得ることは容易ではない。

    本セッションでは、外部ハザード評価のための数値解析と題し、津波、竜巻、航空機衝突の3事象を対象としたシミュレーション評価について専門家による講演を実施し、外部ハザード評価における数値解析の適切な活用法や今後の解析精度向上に係る課題などについて議論を行った。なお、本セッションの聴講者は41名であった。
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    (1) マルチスケール粒子法による構造物に作用する津波力評価
     (九大)浅井光輝

    津波流体力の解析評価に関して、陸上構造物に作用する津波の影響メカニズムには解明されていない点が多くあり、明確な設計基準は定められていない。本講演では、マルチスケール粒子法による構造物に作用する津波力評価に関して、3次元粒子法をベースとしたマルチスケール解析ツールを用い、津波避難ビル・橋梁等に作用する津波流体力評価を実施した例について紹介があった。

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    (2)竜巻飛来物ハザード評価におけるシミュレーション利用の現状
    電中研江口譲

    竜巻によって発生する飛来物の設計速度は,米国では米国原子力規制委員会NRCのNUREG1.76において、また日本では“原子力発電所の竜巻影響評価ガイド”において例示されている。本講演では、それらのガイドにおいて、数値シミュレーションがどのように利用されているかについて説明が行われ、また、実際の竜巻風速場に近いフジタモデルを利用した評価方法との比較結果についても示された。

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    (3)航空機衝突に対する原子力発電施設の耐衝撃設計
    JAEA坪田張二

     原子力発電施設においては、地震・津波等の自然災害はもとより航空機衝突に対してもその構造安全性が要求される。本講演では、航空機衝突に対する原子力発電施設の耐衝撃設計に関して、まず、実物航空機(F-4 Phantom 戦闘機)を用いた衝撃実験の概要について報告が行われた。また、原子力発電施設への大型民間航空機衝突のシミュレーション解析に関する最近の研究動向ついても報告された。

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  • 2016年秋の大会、全体会議、企画セッション、一般セッションのご案内

    2016.9.5 高田 コメント無し

    2016年9月7~9日に久留米シティプラザにて開催される日本原子力学会2016年秋の大会におきまして、計算科学技術部会関連の講演プログラムを以下の通りご案内致します。いずれもL会場 (久留米シティプラザ 大会議室2) にて二日目(9/8)に執り行われます。皆様方のご参加を宜しくお願い申し上げます。

     9月8日(木) L会場(久留米シティプラザ大会議室2)

    • 第20回全体会議 12:00~13:00

    1. 部会長あいさつ(西田部会長)
    2. 各小委員会からの活動報告
    3. その他
    • 企画セッション「外部ハザード評価のための数値解析」13:00~14:30

    座長:西田 明美(原子力機構)

    要旨はこちら(予稿閲覧には別途学会から送付されたパスワードが必要です)

    1. 全体概要 (原子力機構) 西田 明美
    2. マルチスケール粒子法による構造物に作用する津波力評価 (九大) 浅井 光輝
    3. 竜巻飛来物バザード評価におけるシミュレーション利用の現状 (電中研) 江口 譲
    4. 航空機衝突に対する原子力発電施設の耐衝撃設計 (原子力機構) 坪田 張二
    • 一般セッション

    • 材料の分子計算および核分裂・MA燃焼の解析技術 10:20~12:00

    座長:江口 譲(電中研)

    要旨はこちら(予稿閲覧には別途学会から送付されたパスワードが必要です)

    [2L01] ジルコニウム中溶質元素の第一原理計算
    [2L02] 保存的上昇運動を取り入れた結晶欠陥相互作用のモデル化
    [2L03] MD法による中性子照射下結晶欠陥形成過程に及ぼす材料物性の影響に関する検討
    [2L04] MD法を用いた原子空孔集合体-転位相互作用に及ぼす積層欠陥エネルギーの影響解明
    [2L05] TDDFTによる236Uの核分裂ダイナミクスの計算
    [2L06] 教育用FBRプラント設計プログラムのMA燃焼機能の追加

     

    • 地震その他の外部ハザードの材料・構造への影響 14:45 ~ 16:05

    座長:沖田 泰良(東大)

    要旨はこちら(予稿閲覧には別途学会から送付されたパスワードが必要です)

    [2L07] 斜め衝突を受けるRC版の局部損傷評価手法に関する研究
    [2L08] 原子力プラントの包括的安全性向上のための地震時クリフエッジ回避技術の開発
    [2L09] 原子力施設の耐震評価のための組立構造解析結果の大規模分散並列可視化
    [2L10] 過大地震荷重下における振動数に着目した進行性変形の発生条件
    [2L11] PTS時における圧力容器内き裂の応力拡大係数の部位依存性評価

     

    • 熱流動現象の数値解析 16:05 ~ 17:25

    座長:笠原 直人(東大)

    要旨はこちら(予稿閲覧には別途学会から送付されたパスワードが必要です)

    [2L12] 竜巻風速場モデルから導出される気圧変化率の数値解析精度
    [2L13] 流れ加速型腐食に対するRANSによる形状係数予測に関する研究
    [2L14] 原子炉事故解析に向けたマルチフィジクス粒子法コードの開発
    [2L15] 核融合シミュレーションコードのGPUクラスタにおける高性能実
    [2L16] 多相流体問題における省通信Krylov部分空間法の性能評価
  • 【報告】日本原子力学会2016年春の年会 企画セッション

    2016.3.31 高田 コメント無し

    2016年3月26日(土) 13:00~14:30 B会場

    場所:東北大学 川内キャンパス(講義棟B棟101)

    「解析コードV&Vの現状と実施例」

    座長:(東大)笠原直人 氏

    近年、数値解析モデルの進歩と計算機性能の飛躍的向上により、様々な工学分野において数値シミュレーションの果たすべき役割が増大し、それに伴ってシミュレーション結果の信頼性を確保することが重要な課題となっている。計算科学技術部会では、設立当初から計算結果の精度に関する検討を行う活動を継続しており、モデリング&シミュレーションのV&V(検証と妥当性確認)に関する新しい標準に関する検討を進めてきた。本企画セッションでは、炉物理分野、熱流動分野、および異分野(土木・建築分野)における解析コードV&Vの現状および実施例について3名の専門家の方による講演を行い、今後策定作業が進むと予想される各分野のV&V実施手順の具体化に関する参考情報を提示した。

    (1) 炉物理分野における解析コードV&Vの現状
     (原子力エンジニアリング)巽雅洋氏

    炉物理解析の目的は、個々の核種の微視的な反応確率のデータを用いて中性子のバランス方程式を解き、様々な核種が混在するシステムの巨視的な挙動を予測することである。本講演では、確率論的手法であるモンテカルロ法と決定論的手法である炉心解析コードのV&Vについて、不確かさの考え方や妥当性確認の方法に関する説明が行われた。

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    (2)熱流動分野における解析コードV&VとScaling
    (原子力機構)中村秀夫氏

    熱流動分野における解析コードV&Vの方法や影響については、これまで多くの議論や対応がなされているが、現象予測に際する内挿や外挿に係るScalingについては、実施の妥当性を系統的に述べているものは主に、システム解析コードを対象にしており、件数も少ない。本講演では、Scalingの意味や影響について説明があり、今後の課題に関する議論が行われた。

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    (3)原子力分野以外における解析コードV&Vの現状
    (東京大学)越塚誠一氏

    解析の品質については、工学シミュレーションを実際に設計-生産に利用する場合に、それが可能となるようなツールを整備するとともに「解析した結果の品質が保証されていること」が重要であるということが強調されている。本講演では、品質V&Vの考え方について説明があり、加えて、日本計算工学会や土木学会におけるV&V活動に関する紹介が行われた。

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  • 【報告】日本原子力学会2015年秋の大会 企画セッション

    2015.9.24 高田 コメント無し

    2015年9月9日(水) 13:00~14:30 D会場

    場所:静岡大学 静岡キャンパス(共通教育A棟A104教室)

    「シビアアクシデント解析の現状とChallenge」

    座長:(東大)笠原直人 氏

    シビアアクシデント解析コードは、感度解析やシナリオ検討など実験的アプローチを補完する優れた能力を有し、事故時の現象進展について妥当な結果を与えることが示されているが、コード内に存在する非常に多くのモデルが相互に関連しながら解析が行われるため、その全容を理解し、各モデルが現象評価結果に対して与える影響を明確化することは容易ではない。本企画セッションでは、シビアアクシデント解析コードの現状と課題に関して3名の専門家の方による講演が行われた。

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    なお本企画セッションは、電気新聞より平成27年9月10日付け本紙2面にて紹介頂きました。本文は以下のリンクをご参照下さい。

    http://www.shimbun.denki.or.jp/news/energy/20150910_02.html

     (リンク期間は平成283月頭頃まで)

     

    (1)シビアアクシデント解析コードの概要
     (エネ総研)内藤正則 氏

    福島原発の事故を受けて2011年11月に発足したOECD/NEAの福島原発事故ベンチマーク解析(BSAF)プロジェクトにおいて、従来のシビアアクシデント解析コードでは未考慮の事象・物理現象に対するモデル化の方針を議論し、BSAF共通の解析条件で事故解析が進められている。本講演では、新たなモデル化の主要対象箇所が示され、モデルの概要と課題に関する説明が行われた。

    (2)解析コードを用いた現象評価方法
    (東芝) 小島良洋 氏

    シビアアクシデント時のプラント挙動評価を行う際、現象モデルの不確かさが大きいことによって過度に保守的な評価が行われる可能性があるため、不確かさ低減のために機構論的モデル化や個別要素試験を実施することが有益である。本講演では、MAAPコードによる福島第一原子力発電所の事故進展解析結果に基づき、圧力容器内及び格納容器内で発生したと推定されている現象とその評価結果に関して説明が行われた。

    (3)解析モデル開発におけるChallenge
    (東大)岡本孝司 氏

    シビアアクシデント解析においては、炉心を構成する構造材の変形、溶融、流動、凝固、化学反応といった非線形度が桁違いに大きな現象を解く必要があるため、精密に解くことはあまり意味を持たず、解析の限界を知りつつ可能な限りの評価を行う事が求められている。本講演では、炉内溶融凝固挙動、構造材変形挙動、MCCI挙動などの解析に関するチャレンジについて、実験結果や3次元解析結果に基づく説明が行われた。

  • 【報告】日本原子力学会2014年春の年会 企画セッション報告

    2014.4.30 コメント無し

    2014年3月27日(木) 13:00~14:30 L会場

    「シミュレーションのV&Vの現状と課題」

    座長 越塚 誠一(東京大学)

    (1) 規制庁 笠原 文雄

    過酷事故時格納容器内挙動のV&V データベース

    (2) 東京都市大学 村松 健 教授

    確率論的リスク評価分野におけるV&V

    (3) 伊藤忠テクノソリューションズ 中村 均 氏

    V&V に関わる技術標準の動向

    V&V(Verification & Validation)(検証と妥当性確認)はシミュレーションの信頼性を高めるための方法論である。特に、新規制基準では、過酷事故対策が規制要件化されたことに伴い、過酷事故対策の有効性評価が要求されるようになった。そこでは過酷事故解析の信頼性をどのように高めるか、さらには、どのように評価するかが課題となっている。また、過酷事故対策および安全性向上評価において、確率論的リスク評価(PRA)が重視されるようになるが、PRAのV&Vについても課題を検討しておく必要がある。一方、シミュレーションに関するV&Vの技術標準が整備されつつある。そこで、過酷事故解析のV&V、PRAのV&V、およびV&Vの技術標準の動向について専門の方々より発表いただき、原子力分野におけるシミュレーションのV&Vの現状と課題について議論した。聴講者は68名であった。

    本企画セッションにおける3つの講演の概要は、以下の通りである。

    1.過酷事故時格納容器内挙動のV&Vデータベース(規制庁 笠原 文雄 氏、工藤義朗氏による代理発表)

    OECD/NEAでは2000年代前半に炉内挙動及び熱水力システム挙動に係る試験データベースが整備されていたが、格納容器内挙動については、必要性が叫ばれていたにも係らず試験データベースの整備が遅れていた。しかし、このほどタスクグループメンバの尽力により、CCVM(Containment Code Validation Matrix)としてドキュメントが完成し公開されることになった(NEA/CSNI/R(2013)x)。同報告書では、PWR/BWR、PHWR及びVVERのDBA/BDBA/SAに係る127の現象を6つに分類(熱流動、水素、エアロゾル・FP、ヨウ素化学、溶融物分布、システム)し、総計217の実験をそれらに割り当て、各々の試験の概要やデータ、パラメータの種類と範囲、解析コードのベンチマーク実績等が整理されている。本報告では、CCVMの概要を示すとともに、V&Vの観点から格納容器内挙動データの活用事例が示された。

    2. 確率論的リスク評価分野におけるV&V(東京都市大学 村松 健 教授)

    PRAは、施設の安全を総合的に評価するのが目的であるため、多様なモデルやデータを組み合わせて用いる。従ってV&Vは、個別モデルとそれを統合するシステムモデルの2つの側面で検討されねばならない。本講演では,原子力学会標準委員会が発行しているPRA関係の標準を参考に、2種のV&Vがどう扱われているかを示した。

    また、シミュレーションのV&Vは利用目的に応じた精度の確保を目的とするのに対し、PRAでは、望む精度で評価することは一般には難しいため、利用可能な情報を組み合わせてPRAを行うとともに、その一部として不確実さ評価を行って、不確実さを考慮しつつ意思決定を行う、という発想でなされることが多い。V&VとPRAの不確実さ評価は異なる概念であるが、その構成要素には共通点があることを指摘した。

    3.V&Vに関わる技術標準の動向(伊藤忠テクノソリューションズ 中村 均 氏)

    V&Vという概念は品質保証の基本要素として広く産業界で使われている。ISO9001に従ったシミュレーション業務の品質保証のための標準としては、欧州のNAFEMSによるQSS001があり、日本ではその流れを汲んだ計算工学会の標準(HQC001&2)がある。一方、シミュレーションモデル開発の品質保証の標準としてはASME V&Vが有名であり、固体力学、流体力学、原子力そして医療の分野で標準整備が進められている。日本では原子力学会においてモデリン&シミュレーションの信頼性確保に関するガイドラインの策定作業が進められている。これら動向の整理を試みると共に、原子力学会の活動の概要を紹介した。