Computational Science and Engineering Division, Atomic Energy Society of Japan
  • 【報告】2014年春の大会 計算科学技術 一般セッション

    2014.4.30 コメント無し

    日時:2014年3月27日 14:30~17:30

    場所:東京都市大学 L会場(1号館12D)

    計算科学技術(構造解析) 14:30~16:10

    座長:JAEA 西田明美

    L28 非構造格子における前処理付き反復法ソルバーの最適化カーネル;行列格納形式,ブロッキング,リオーダリングの効果
    (東大) 奥田洋司氏

    大型計算機においては、階層的なメモリやネットワーク構造に配慮した並列実装が必須となってきている。非構造格子の代表的な解法である有限要素法を対象に、京やFX10におけるハイブリッド並列プログラミングの効果や実行性能結果について報告した。

    L29 分子動力学法による面心立方金属の空孔挙動に及ぼす材料物性の影響に関する研究
    (東大) 石原雅崇氏

    オーステナイト鋼では、弾性論に基づくと、積層欠陥四面体が安定な空孔集合体の形状であることが明らかとなっているが、304系ステンレス鋼のTEM解析では、積層欠陥四面体等が観察されていないという問題があった。分子動力学法によってオーステナイト鋼中の空孔集合体の形態に及ぼす積層欠陥エネルギー、サイズ、温度の影響を解明し、弾性論の結果とは異なり、軽水炉運転温度相当ではマイクロボイドが安定であることを報告した。

    L30 分子動力学法を用いた軽水炉炉内構造材における照射硬化のミクロメカニズム解明に関する研究
    (東大) 西尾慶太氏

    積層欠陥エネルギーは、オーステナイト鋼の照射硬化を考える上で重要な材料物性の一つである。軽水炉内構造材における照射硬化のミクロメカニズムである格子間原子型積層欠陥ループと転位の相互作用について、その影響を分子動力学法によって解明した。積層欠陥エネルギーが低いほど、欠陥残存の発生頻度が増加し、硬化が高くなった結果を報告した。

    L31 教育用FBR プラント設計プログラムFP-Design による設計例
    (東大) 笠原直人氏

    学生への教育演習として、FP-DesignというFBRプラント全体を一元的に設計できるよう開発したプログラムを紹介した。また、実際に講義においてこのプログラムを活用した設計演習例のいくつかを報告した。

    L32 高低温流体の境界の空間変動に対する熱応力の応答に関する研究
    (東大) 早田浩平氏

    流体温度ゆらぎによって接液構造物に生じる熱応力を従来手法では過小評価するという問題があった。そこで有限要素解析により、熱成層界面ゆらぎ現象による熱応力発生メカニズムを解明したことを受け、高低温流体の境界ゆらぎにより発生する熱応力をより高精度に評価できる新しい周波数応答関数を提案し、その適用について報告した。

    L33 組立構造解析を用いた固有値解析
    (JAEA) 中島憲宏氏

    部品ごとに有限要素分割したデータを集積し、それらを結合して解析できるようにする組立構造解析手法を提案してきており、その解析技術の向上の一環として、部品境界条件の一般化に取り

    組んでいる。連続体とみなせる大型組立構造物の有限要素解析に適用した結果や、組立構造物の有限要素解析技術を利用した解析技術について報告した。

     

    計算科学技術(計算科学技術) 16:10~17:30

    座長:JAEA 中島憲宏

    L34 ハザード適合地震波による構造物の応答解析
    (大成建設) 五十嵐さやか氏

    原子力施設の確率論的地震リスク評価の高度化を目的として、対象サイトの地震ハザードと調和し、かつ、震源特性の違いを含む200波もの地震波群をモンテカルロシミュレーションにより作成してきた。これらを入力地震波とした質点系モデルの地震応答解析を実施し、震源特性の異なる地震波群および構造特性の不確定性による建物応答への影響の分析を報告した。

    L35 高速炉の高サイクル熱疲労解析評価に対するV&V 実施手順の具体化
    (JAEA) 田中正暁氏

    ナトリウム冷却高速炉(Na 高速炉)における高サイクル熱疲労に対する解析評価手法を整備するにあたり、使用する解析コードの検証(V&V:Verification & Validation)を含め外挿評価となる実機解析結果の信頼性確保が極めて重要となる。国内外における既存手法を基に、V&V と実機での現象予測および機器等の健全性確認を目的とする実機外挿評価を含めた実施手順V2UP(Verification & Validation, Uncertainty quantification and Prediction)の具体化について報告した。

    L36 3D Numerical Simulation of a Self-leveling Experiment using CFD-DEM Code
    (九州大学) LianCheng Guo氏

    デブリベッドの形成やセルフレベリング挙動の把握は、溶融燃料の移動や冷却に重要である。3次元炉心安全解析コードSIMMER-IVと個別要素法をカップリングしたハイブリッドな解析手法を開発し、セルフレベリング現象への適用性について妥当性評価を行った結果を報告した。

    L37 Development of a Hybrid Particle-Mesh Method for Multiphase Flow Simulations
    (九州大学) XianXing Liu氏

    混相流の解析を行うために、CIP/MMと有限体積粒子法をカップリングした。流れ場をCIP/MMで、相の境界部分を粒子で解くことを試みた。ベンチマーク問題を通じた、解析手法の妥当性と安定性について報告した。

    L38 電磁ポンプ用三次元電磁流体解析コードの開発
    (東芝) 浅田隆利氏

    電磁ポンプ解析には電磁場とナトリウムの流動場の連成解析が必要であり、また揚程予測精度を高めるためには径方向および周方向を模擬可能な三次元化が必要となる。このため、三次元の電磁流体解析コードを開発し、過去の試験との比較を行った検証結果を報告した。

  • 【報告】日本原子力学会2014年春の年会 企画セッション報告

    2014.4.30 コメント無し

    2014年3月27日(木) 13:00~14:30 L会場

    「シミュレーションのV&Vの現状と課題」

    座長 越塚 誠一(東京大学)

    (1) 規制庁 笠原 文雄

    過酷事故時格納容器内挙動のV&V データベース

    (2) 東京都市大学 村松 健 教授

    確率論的リスク評価分野におけるV&V

    (3) 伊藤忠テクノソリューションズ 中村 均 氏

    V&V に関わる技術標準の動向

    V&V(Verification & Validation)(検証と妥当性確認)はシミュレーションの信頼性を高めるための方法論である。特に、新規制基準では、過酷事故対策が規制要件化されたことに伴い、過酷事故対策の有効性評価が要求されるようになった。そこでは過酷事故解析の信頼性をどのように高めるか、さらには、どのように評価するかが課題となっている。また、過酷事故対策および安全性向上評価において、確率論的リスク評価(PRA)が重視されるようになるが、PRAのV&Vについても課題を検討しておく必要がある。一方、シミュレーションに関するV&Vの技術標準が整備されつつある。そこで、過酷事故解析のV&V、PRAのV&V、およびV&Vの技術標準の動向について専門の方々より発表いただき、原子力分野におけるシミュレーションのV&Vの現状と課題について議論した。聴講者は68名であった。

    本企画セッションにおける3つの講演の概要は、以下の通りである。

    1.過酷事故時格納容器内挙動のV&Vデータベース(規制庁 笠原 文雄 氏、工藤義朗氏による代理発表)

    OECD/NEAでは2000年代前半に炉内挙動及び熱水力システム挙動に係る試験データベースが整備されていたが、格納容器内挙動については、必要性が叫ばれていたにも係らず試験データベースの整備が遅れていた。しかし、このほどタスクグループメンバの尽力により、CCVM(Containment Code Validation Matrix)としてドキュメントが完成し公開されることになった(NEA/CSNI/R(2013)x)。同報告書では、PWR/BWR、PHWR及びVVERのDBA/BDBA/SAに係る127の現象を6つに分類(熱流動、水素、エアロゾル・FP、ヨウ素化学、溶融物分布、システム)し、総計217の実験をそれらに割り当て、各々の試験の概要やデータ、パラメータの種類と範囲、解析コードのベンチマーク実績等が整理されている。本報告では、CCVMの概要を示すとともに、V&Vの観点から格納容器内挙動データの活用事例が示された。

    2. 確率論的リスク評価分野におけるV&V(東京都市大学 村松 健 教授)

    PRAは、施設の安全を総合的に評価するのが目的であるため、多様なモデルやデータを組み合わせて用いる。従ってV&Vは、個別モデルとそれを統合するシステムモデルの2つの側面で検討されねばならない。本講演では,原子力学会標準委員会が発行しているPRA関係の標準を参考に、2種のV&Vがどう扱われているかを示した。

    また、シミュレーションのV&Vは利用目的に応じた精度の確保を目的とするのに対し、PRAでは、望む精度で評価することは一般には難しいため、利用可能な情報を組み合わせてPRAを行うとともに、その一部として不確実さ評価を行って、不確実さを考慮しつつ意思決定を行う、という発想でなされることが多い。V&VとPRAの不確実さ評価は異なる概念であるが、その構成要素には共通点があることを指摘した。

    3.V&Vに関わる技術標準の動向(伊藤忠テクノソリューションズ 中村 均 氏)

    V&Vという概念は品質保証の基本要素として広く産業界で使われている。ISO9001に従ったシミュレーション業務の品質保証のための標準としては、欧州のNAFEMSによるQSS001があり、日本ではその流れを汲んだ計算工学会の標準(HQC001&2)がある。一方、シミュレーションモデル開発の品質保証の標準としてはASME V&Vが有名であり、固体力学、流体力学、原子力そして医療の分野で標準整備が進められている。日本では原子力学会においてモデリン&シミュレーションの信頼性確保に関するガイドラインの策定作業が進められている。これら動向の整理を試みると共に、原子力学会の活動の概要を紹介した。

  • 第11回(平成25年度)部会賞 贈賞報告

    2014.4.21 コメント無し

    第11回(平成25年度)部会賞 贈賞報告

    表彰小委員会委員長 越塚誠一(東京大学大学院)
    選考経緯

    部会メーリングリストおよび部会ホームページを通して、本年度部会賞候補者の募集を平成25年12月27日(金)締め切りで行ないました。その結果、部会功績賞、部会業績賞、部会CG賞、部会奨励賞、部会学生優秀講演賞に複数名の推薦がありました。
    推薦者の推薦書、業績(論文、予稿、部会のセッションでの聴講者の評価シート等)をまとめ、平成26年2月18日(火)に表彰小委員会を開催し慎重に審議致しました。その選考結果を同日開催された部会運営委員会にお諮りし、最終的に、部会功績賞1件、部会業績賞1件、部会CG賞2件、部会奨励賞3件、部会学生優秀講演賞2件を決定させていただきました。その結果は以下の通りです。

    部会功績賞

    計算科学技術分野において幅広くかつ顕著な貢献のあった個人を対象とし、毎年1名以内とする

    受賞者名: 功刀 資彰 氏(京都大学大学院)

    業績名 :「原子力工学における熱流動の計算科学技術に関する卓越した研究成果及び計算科学技術部会への貢献」
    (英訳)Excellent Research Activities on Computational Science and Engineering of Nuclear Engineering Thermal-Hydraulics and Contribution to CSED

    贈賞理由:

    刀資彰氏は、長年にわたり原子力工学における熱流動の計算科学技術に関する卓越した研究成果を数多く挙げてきているだけでなく、日本原子力学会計算科学技術部会においても2007年度の部会長を務めるなど大きな貢献をしてきたので、部会功績賞を受賞するにふさわしい。

    功刀資彰氏の研究成果は、高温ガス炉に関する熱流動の研究、核融合炉に関する熱流動の研究、自由表面流れの計算手法、MARS法の提案、沸騰現象の詳細解析、高速増殖炉におけるガス巻き込みなど多岐にわたっている。

    以上の理由から部会功労賞を贈呈することを決定した。

     

    部会業績賞

    計算科学技術分野において顕著な学術または技術上の業績のあった個人またはグループ(連名)を対象とし、毎年2件以内とする。

    受賞者名:内田 俊介 氏(日本原子力研究開発機構)

    業績名 :「粒子法に関する研究とその計算科学技術への展開」
    (英訳)Studies of Computational Science and Technology in Water Chemistry

    贈賞理由:

    内田俊介氏は、長年にわたり水化学の研究を先導してきた。特に原子力プラントの配管の健全性にとって重要な流れ加速腐食(FAC)および液滴衝撃エロージョン(LDI)に関し、計算コードシステムを用いて予測する手法を開発した。その成果は、水化学と熱流動の複雑な連成問題を計算科学技術を用いることで解くものであり、先端的である。

    こうした成果は、日本原子力学会論文集英文誌等に論文として多数が掲載されている。また、日本原子力学会の大会において、計算科学技術部会の一般セッションで継続的に発表されており2007秋の大会から現在まで合計38件にのぼる。また、2007年6月に新たに発足した水化学部会の初代部会長も勤められており、最近では日本原子力学会論文集英文誌に水化学に関するレビュー論文を書いている。

    このように内田俊介氏は水化学の分野における著名な研究者であるだけでなく、計算科学技術を水化学の分野に取り入れ、V&Vについても積極的に適用し、水化学および計算科学技術の発展に多大な貢献をおこなっている。

    以上の理由から部会業績賞を贈呈することを決定した。

     

    部会CG賞

    原子力の計算科学技術分野において結果の表示・可視化について優秀な業績のあった個人またはグループ(連名)を対象とし、毎年2件以内とする。

    受賞者名:河村 拓馬 氏(日本原子力研究開発機構)

    業績名 :「粒子ベースボリュームレンダリングに基づく遠隔可視化技術の開発」

    贈賞理由:

    候補者は、PBVR(粒子ベースボリュームレンダリング)と呼ばれる透過的可視化手法の分散並列処理技術を考案してクライアント・サーバ型の遠隔可視化ソフトウェアを開発し、原子力分野の大規模3次元シミュレーションを膨大な計算データを転送することなく対話的に可視化する技術を確立した。この技術を1億自由度規模の原子力施設の耐震シミュレーション結果に適用し、従来の商用可視化ソフトウェアに比べて飛躍的に高速な可視化解析に成功した。

    近年、計算機の性能向上に伴い、原子力分野のシミュレーションから生成されるデータは大規模化・複雑化の一途をたどっており、数十〜数百テラバイト規模のデータが日常的に生成されるようになってきた。従来の可視化手法では①スーパーコンピュータから計算データを転送してユーザ端末上で可視化処理、②スーパーコンピュータ上で可視化処理を行い画面のピクセルデータを転送してユーザ端末上に表示、③スーパーコンピュータとユーザ端末の間でポリゴンデータを転送するクライアント・サーバ型の遠隔可視化処理といった3つのアプローチが主に用いられてきた。しかしながら、①はデータ転送速度、ユーザ端末処理性能が大幅に不足、②は画像の回転、拡大・縮小等の対話的な操作が困難といった問題に直面しており、③についてもポリゴンデータが計算データと同様に大規模化することから、①と同様の問題が発生している。

    候補者は、上記の問題を解決する方策としてPBVRの可視化用粒子データによるデータ圧縮に着目して③のクライアント・サーバ型可視化処理を飛躍的に高速化することに成功した。PBVRでは3次元スカラーデータを物理値によって決まる色と不透明度の粒子集団によって表現するが、表示する画像の解像度(画素数)によって決まる粒子データサイズは最大でも100MB程度となることから、GB以上の大規模データに対して大きなデータ圧縮が期待できる。この点に着目してPBVRをサーバ上の粒子データ生成処理とクライアント上の粒子データ描画処理に分離し、圧縮された粒子データを転送することで、上記のボトルネックを解消した。数値実験の結果、計算データを転送してから商用可視化ソフトウェア(AVS)で処理する従来の手法、あるいは、既存の商用クライアント・サーバ型可視化ソフトウェア(Ensight)を用いる場合に比べて数十倍高速な可視化処理性能、および、対話的な画像操作を可能にする描画速度(30フレーム/秒)を実現することに成功した。

    候補者の提案した技術は汎用性が高く、耐震シミュレーションのような大規模有限要素解析だけでなく、プラズマシミュレーションや燃料溶融複雑系シミュレーションといった大規模流体解析への適用事例も示しており、候補者が開発した技術は今後の原子力分野の計算科学において大きな役割を果たすことが期待できる。

    以上の理由から部会CG賞を贈呈することを決定した。

     

    受賞者名:竹島 由里子 氏(東北大学)

    業績名 :「構造解析のためのオントロジーに基づいた協調可視化環境の開発」

    贈賞理由:

    本研究は、数値計算や計測などによって得られた数値データを視覚的に解析する可視化処理全般を支援・管理する環境の開発を目的としている。現象の解析を行う研究者は、可視化処理の専門家ではないことが多く、可視化処理に要する手間は最小限にしたいという要望は少なくない。また、可視化処理結果は、画像としてのみ保存されていることが多く、再現性に乏しい。本研究で提案された環境では、これらの問題を解決するため、対象データの特性と可視化目的に応じて、適切な可視化技法を提示し、それを用いた可視化結果を自動的に表示する。また、可視化パラメタ値の変更などの可視化処理の履歴を一括管理する環境を兼ね備えている。本提案環境により、構造解析分野における可視化処理に要する負荷の削減、新規の可視化結果の獲得による新たな知見の導出、データの再利用可能性による研究効率の向上などが期待できるといえる。

    以上の理由から部会CG賞を贈呈することを決定した。

     

    部会奨励賞

    計算科学技術分野において顕著な学術または技術上の業績のあった40才程度まで(平成23年3月31日において)の個人を対象とし、毎年3名以内。

    受賞者名:沖田 泰良 氏 (東京大学)
    業績名 :「超音波信号変化から照射下微細組織を評価する材料劣化診断シミュレータの開発」
    贈賞理由:

    沖田泰良氏は.原子炉構造材料として使用されるオーステナイト鋼を対象として、ボイド,転位,析出物等の照射環境で形成する微細組織と超音波の相互作用を定量化し、それに基づいて信号変化から微細組織・照射劣化を評価するシミュレータの開発を行った。超音波試験は、従来からき裂探傷に用いられてきた技術であるが、本シミュレータを併用することにより、き裂の有無に加えて、き裂発生前の材質変化を捉えることも可能となると考えられる。

    本研究は、分子動力学法や有限要素法等、複数の計算手法を適融合させることにより進められており、計算技術の発展にも多大なる貢献が見られた。また、本研究は、計算科学技術を利用し原子炉の安全性と経済性を同時に高める研究であると同時に、既存軽水炉,次世代原子炉等、広範な適用が考えられる。

    尚、本研究は、2013年8月国際会議SMiRT22にて発表し、世界的にも注目度が高かった。

    以上の理由から部会奨励賞を贈呈することを決定した。

     

    受賞者名:羽間 収 氏 (伊藤忠テクノソリューションズ株式会社)
    業績名 :「有限要素法による3次元全自動き裂進展解析システムの開発」
    贈賞理由:

    羽間収氏は、原子力機器を中心とした溶接部などを含む3次元構造物中のき裂進展解析を自動化するシステムを開発し、その妥当性を示している。溶接部という複数の物性が関わり、かつ幾何学的にも複雑形状をしている部位におけるこれまでのき裂進展解析の困難を克服し、全自動での3次元解析を実現し有用な成果を得つつある。溶接部のき裂進展感受性、残留応力等を考慮しながら、3次元FEMメッシュを自動更新することにより、き裂進展解析を全自動化したシステムは、おそらく世界初と思われる。

    以上の理由から部会奨励賞を贈呈することを決定した。

     

    受賞者名:Guo Liancheng 氏 (九州大学)
    業績名 :「炉心損傷事故における堆積デブリのセルフ・レベリング挙動評価手法の開発」
    贈賞理由:
    Guo Liancheng氏は、文部科学省原子力システム研究開発事業「炉心損傷時の炉心物質再配置挙動評価手法の開発」(研究代表機関:日本原子力研究開発機構、研究期間:平成22〜25年度)に再委託機関(九州大学)の研究者(学術研究員)として参画している(平成22年10月〜平成26年3月)。この研究開発事業において受賞候補者は、ナトリウム冷却型高速炉における炉心損傷時の炉心物質再配置挙動で重要な堆積デブリの自己平坦化(セルフ・レベリング)挙動について、炉内構造設計及び安全評価に適用可能な評価手法の開発を進めた。セルフ・レベリング現象は、主として燃料とスティールの固体デブリ、液体ナトリウムとその蒸気が混在し流動化する相変化を伴った多成分多相流の熱流動現象である。このため受賞候補者は、流体力学計算に多流体モデルを採用する高速炉安全解析コードSIMMERの解析手法を用い、固体デブリ間の機械的相互作用を個別要素法(DEM)によって解析するオイラー/ラグランジェ法に基づくハイブリッドコードを開発した。本手法は、炉内構造物局所のセルフ・レベリングによる堆積デブリの運動挙動を物理現象に基づいて高精度で解析し、その挙動に介在するメカニズムを詳細にシミュレーションすることが可能である。これにより、初期条件として任意に与られた堆積デブリの粒径やポロシティ、堆積デブリの厚みや勾配等に対する三次元的なセルフ・レベリング挙動を適切に模擬し、炉内構造設計及び安全評価に適用できる手法の基盤技術を整備するとともに、セルフ・レベリング挙動に関連する既往試験データを利用することで手法の妥当性を検証した。受賞候補者が開発したオイラー/ラグランジェ解析手法は、高速炉安全解析の標準コードであるSIMMERの適用範囲を大幅に広げる基礎技術として重要なものである。

    本研究開発の成果は、軽水炉も含めた炉心損傷事故時の熱流動解析だけではなく、他の産業分野における多相流解析にも応用できる適用範囲の広い計算科学技術であり、部会奨励賞に十分値する業績と考えられる。尚、本研究業績は、上述の原子力システム研究開発事業における成果として、本会が主催するNTHAS8(2012年)、「2013年春の年会」及び「2013年秋の大会」において口頭発表された。

    以上の理由から部会奨励賞を贈呈することを決定した。

     

    部会学生優秀講演賞

    計算科学技術分野において、他の模範となる講演を行った学生を対象とし、毎年4名程度とする

    受賞者名:浅利 圭亮氏 (東京大学)
    業績名 :「照射誘起微細組織に基づいた原子炉構造材照射劣化予測に関する研究」
    贈賞理由:

    浅利圭亮氏は、オーステナイト鋼を対象として、原子炉供用環境下で形成するミクロ組織と機械的特性変化の関係を記述するモデル構築を行ってきた。特に、オーステナイト鋼の特徴的な物性である低積層欠陥エネルギーに着目して、米国著名研究者との共同研究により原子間ポテンシャルを開発し、またそれを用いて網羅的な分子動力学計算を行ってきた。これにより、照射誘起微細組織としてのボイド、転位ループ等から照射硬化を予測する手法を構築し、この手法と非破壊検査を融合させることにより、構造材料健全性評価の高度化に資すること技術を提案した。これらの成果は、世界的にも極めて評価が高く、今後益々の研究の発展が期待される。

    以上の理由から部会学生優秀講演賞を贈呈することを決定した。

     

    受賞者名:後藤 和哉 氏 (東京大学)
    業績名 :「大規模アセンブリ構造解析のための反復法線形ソルバの研究」
    贈賞理由:

    構造解析の分野では年々大規模な解析が可能となってきているが、工学の実機の状況において、構造物は複数の部品を組み合わせたアセンブル構造であり、それらの接触状態を考慮したうえで、応力解析や振動解析をしなければならない。後藤和哉氏は、昨年8月にアメリカ、サンフランシスコにて開催されたSMiRT-22において、大規模アセンブリ構造解析および大規模接触解析のための反復法線形ソルバの適用に関する発表を行った。この研究では、ラグランジュ未定乗数法を用いた大規模構造接触解析に対し、拘束条件に対応する自由度を効率的に除去し、さらに並列化を実施することで、反復法線形ソルバの適用性を広げることに成功した。また、この講演では聴衆との議論も活発に交わされ、研究成果に注目が集まった。

    以上の理由から部会学生優秀講演賞を贈呈することを決定した。

  • 【報告】平成25年度部会賞表彰式及び全体会議

    2014.4.21 コメント無し

    2014年春の年会2日目である3月27日の12:00~13:00 にL会場にて,平成25年度部会賞表彰式が執り行われ,越塚部会長から受賞者に表彰状が授与されました。その後,2013年度の活動報告および2014年度の活動方針と役員紹介が行われました。(リンクや写真をクリックすると,それぞれダウンロードできます)

  • ニュースレター22号

    2014.4.14 桐村 コメント無し

    ニュースレター22号をお届けします。

    【目次】

    • 巻頭言 「過去の占いは慎重に、未来の占いは大胆に(東京大学 奥田洋司)」
    • 2014年春の年会・計算科学技術部会全体会議案内
    • 2014年春の年会・計算科学技術部会一般セッション開催案内
    • 一言一語 先進的地層処分に向けた計算科学からのアプローチ:古典的分子動力学計算を中心に(九州大学 有馬立身)
    • 年間行事予定
    • 編集後記